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不動産コンサルタント 大野レポート No.09
タカラ塾
2002年10月01日
不良債権・債務処理の現場から
 今、私の手元に一冊の本がある。題名は「21世紀への不動産業ビジョン」、編集が[財]不動産流通近代化センター、監修が当時の建設省建設経済局である。
 昭和61年8月に発行されたもので、不動産業の将来像として、信頼産業、都市環境創造産業、高付加価値型サービス産業、生活サービス総合提供業と謳っている。
 残念ながら、皮肉なことにこの本が発行された直後からバブルが発生し、その後極端なバブル潰しが行われ、皆さんご存知のように十年以上にわたり、地価の下落、不良債権の増加、金融機関等の破綻・・・のみならず全産業に於ける戦後の日本経済の総決算をせまられる・・・事態にまで至っているといっても過言ではない状況にあります。
 しかも、不良債権(実は不良債務)の処理の現場で感じるのは、犯人(金融機関・官僚・政治家)の追求は無しで被害者(一般国民・企業家)からいかにして債権を回収するのかが現実の過酷な実態である。金融機関はだ れも責任をとらないどころ か、われわれの税金をもって 救済をしている状況である。
 われわれ業者は、21世紀ビジョンにある「信頼産業」になるどころかまるで、バブルの犯罪容疑者になっている状況です。しかも、平成6年からの住宅地ミニバブル政策(超低金利・金融公庫のゆとり償還・ローンン控除等)による新築マンションブーム等も昨年後半から陰りが見え始め・・・これから長い冬の時代が到来したといえます。
 弊社では、債務者側にたった不良債務問題に真っ向か立ち向かい数多くの事例とノウハウを蓄積しました。しかしながら、政府や官僚 の金融機関救済のみの愚策により、処理しても処理しても不良債権は減るどころか増えているのが実態です。
 そして、今朝(H十四・十・一)のマスコミの発表では、小泉首相は柳沢金融庁長官を更迭し竹中経済担当大臣を兼務せたのです。これにより、ブッシュ米国大統領との会談で約束させられた不良債権の処理は加速させられ、未曾有の状況が露呈し、特に中小企業・零細企業の倒産が激増し、危機から初の国有銀行も生れるかも知れません。
 これからも、増えるであろ債務者からの相談の中で王道を歩むためにも、日頃から心・技・体を整え無心に近い状態で謙虚にその声に耳を傾け、又専門家先生方のご協力のもと、ご縁のある方は一人でも解決していく過程において、その現場から新しい理論なり、価値観を生み出して生きたいと考えています。
 又、売買は単純仲介業からコンサルティング仲介へ、賃貸は原点に戻り対面商売へ、管理業務は単純管理からオーナーの代理人感覚の資産運用家へと激変していく流れの中で、大局観の重要とともに、これからは激動の流れに流されないで正に逆流のなかを泳ぎきってなお対岸に着くだけの体力・気力の勝負なのかなと考える今日このごろです。
 結論として言えることは、最後に生き残るのは、倫理道徳観のしっかりした業者(正に信頼産業)で、なお現場(マーケット)の変化にわれわれが意識改革をするか。できない場合は、プレーヤーそのものの交代も起こるのではないかと危惧しているのは私一人ではないようだ。

タカラ塾塾長    大野 哲弘

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