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不動産コンサルタント 大野レポート No.03
タカラ塾
2001年5月17日
「失敗の本質」を読んで
 5月の連休に、ある人に薦められて「失敗の本質」(日本軍の組織的研究)を読んだ。この本のねらいは、序章の中にも書いてあるように【大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織にとっての教訓、あるいは反面教師として活用することが、本書の最も大きなねらいである。・・・戦前の日本においても、その軍事組織は、合理性と効率性を追及した官僚制組織の典型と見られた。しかし、この典型的官僚制組織であるはずの日本軍は、大東亜戦争と言うその組織的使命を果たすべき状況において、しばしば合理性と効率性とに相反する行動を示した。
 つまり、日本軍には本来の合理的組織となじまない特性があり、それが組織的欠陥となって、大東亜戦争での失敗を導いたと見ることが出来る。・・・否むしろ、日本軍の組織的特性は、その欠陥も含めて、戦後の日本の組織一般のなかにおおむね無批判のまま継承された、ということが出来るかもしれない。・・・
 すなわち、平時において、不確実性が相対的に低く安定した状況のもとでは、日本軍の組織はほぼ有効に機能していた、とみなされよう。しかし、問題は危機においてどうであったか、ということである。
 危機、すなわち不確実性が高く不安定かつ流動的な状況それは軍隊が本来の任務を果たすべき状況であったで日本軍は、大東亜戦争のいくつかの作戦失敗に見られるように、有効に機能しえずさまざまな組織的欠陥を露呈した。】
 この本は、大東亜先史の失敗例として六つのケースを取り上げ、個々のケースの失敗の内容を分析しているのである。
 ノモハン・ミッドウエー・ガダルカナル・インパール・レイテ・沖縄陸戦四、海戦二の中に典型的な「失敗」の例を提示している。
 たまたま、同時に読んでいた経済小説「日債銀の破綻」の内容と戦略の欠如・壮大な後送り体質・護送船団方式・責任の所在の不明等その相似性に驚くばかりである。
 1991年に書かれたこの本が現在の日本の政治・官僚・企業等の組織的的欠陥を予言していたことにも二度驚かされている次第である。
 この本の最終ページに・・・さらにいえば、戦後の企業経営で革新的であった人々も、ほぼ40年を経た今日、年老いたのである。戦前の日本軍同様、長老体制が定着しつつあるのではないだろうか。アメリカのトップ・マネジメントに比較すれば、日本のトップ・マネジメントの年齢は異常に高い。日本軍同様、過去の成功体験が上部に固定化し、学習棄却ができにくい組織にになりつつあるのではないだろうか。
 日本的企業組織も、新たな環境変化に対応するために、自己革新能力を創造できるかどうかが問われているのである。・・・で締めくくられていている。

タカラ塾塾長    大野 哲弘

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